フンボルトペンギンはなぜ絶滅しそうなのか?
ペンギンの多くは、最果ての地と称される場所に暮らしている。南極や亜南極はもちろんのこと、温帯地方を生息地とするペンギンも、背後が険しい断崖や砂漠といった、猛獣に襲われることのない海岸で繁殖をする。そのため、現代の野生生物としては珍しく増えている種類も少なくないようだ。
しかし、フンボルトペンギンなど、ヒトが生活をする場所で暮らす種類は、絶滅の危険があるほどに減少を続けている。フンボルトペンギンが絶滅寸前に至った原因には、エルニーニョによる気候変化とアンチョビーの減少が大きいが、それ以前に、フンボルトペンギンが繁殖のための巣をつくるグアノ(海鳥の糞が土化した土壌)を肥料として採取したこと、さらにアンチョビーを乱獲したことによる。
いずれも私たちヒトの営みのせいである。陸と海で暮らすペンギンは、陸の農業と海の漁業という両方からのダメージを受けたのだ。
農業によるダメージは、温帯地方のペンギンのほとんどに見られる。
ペンギンの種類が多いニュージーランドでは、後からやってきたヒトが、森とブッシュに覆われた国土を、海岸まぎわまで牧草地としてしまった。
そのために、それまで海岸のブッシュなどで営巣していたペンギンたちは、繁殖ができなくなったのである。現在は、牧草地に分け入って、牛や羊と対面しながら細々と子孫を残している。
緑の国ニュージーランドと言えば、まるで自然一杯の国のように感じるが、実は自然を破壊し尽くした牧草地の国なのである。