オウサマペンギンとコウテイペンギン
多くのみなさんが、オウサマペンギンを見て「あ、コウテイペンギン!」と言う。それほど似ているのだけれど、そもそもオウサマペンギンとコウテイペンギンが別の種類であることを知らない人が多い。さらに、オウサマペンギンとコウテイペンギンの英名である、キングペンギンとエンペラーペンギンも水族館によっては普通に使われているので、つごう4種類の名前が入り乱れてごちゃごちゃになっているようだ。
この状態には水族館の思惑も一役かっている。オウサマペンギンはコウテイペンギンと近縁のコウテイペンギン属ではあるけれど、南極大陸や南極半島では繁殖しない。つまり動物の持ち出しなどを禁じた南極条約とは関係なく移動されるペンギンであり、比較的暖かいところでも飼育や繁殖が可能なため、南極以外に生息する唯一の大型ペンギンとして、世界中の水族館や動物園で需要が高いペンギンなのだ。
さて一方で、一般来館者は、「南極」とか「北極」という最果ての地に強く惹かれる。さらに南氷洋での捕鯨が盛んだった日本では、「ペンギンと言えば南極」の常識がすっかり定着している。
ということは、普通のペンギンよりも南極のペンギンを展示した方がはるかに人気も高いだろう。そこで水族館では、冷房完備のペンギン水槽を設置し、オウサマペンギンやジェンツーペンギンといった亜南極のペンギンを飼育し「極地ペンギン」として展示したのだ。
たいていの観覧者が、「極地ペンギン」の名の水槽で、他のペンギンとは明らかに違う色の付いた巨大ペンギンを見ると、「これこそ南極にいるペンギンだ」と思ってしまう。それでコウテイペンギンとオウサマペンギンの区別がなくなってしまうのだ。
実のところ、水族館側でも、その誤解をあえて否定するような「ここにいるのはコウテイペンギンではありません」とか「オウサマペンギンは南極には住んでいません」といった表示もしない。(積極的に欺こうとしているわけじゃなく、極地のペンギンであることを知ってもらうことの方が先決であるという意味なのだとご理解いただきたい)
とまあ、そんなようなワケで、オウサマペンギンとコウテイペンギン、そしてキングペンギンとエンペラーペンギンは、同じ種類であるとか、種類は違っていてもみんな南極に住んでいるとか思われてしまっているのだが、とりあえず下に整理しておく。
オウサマペンギンとキングペンギンは同じで「王様」、王様は亜南極に住んでいる。
コウテイペンギンとエンペラーペンギンは同じで「皇帝」、皇帝は南極に住んでいる。
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コウテイペンギン