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アザラシ科の仲間に会える水族館
〈 飼育されている水族館名は、それぞれの種別ページで紹介しています。〉

アザラシは鰭脚類の中でも、最も水中生活に適応した仲間だと言える。出産子育ては氷上や陸上で行うものの、イモムシのように這うだけで、速く長く移動することは困難な体型となっている。そもそもアザラシたちは、アシカのように、前脚で上体を起こしたり、四肢をふんばって歩行したりというようなことはできないのだ。
そのかわり、水中での身体能力は高く、水中ではイルカの体のように無駄がない。前脚は使わず、体の後方にのみ伸びる後ろ脚は、広げて尾の代わりに利用している。
アシカの仲間にはある耳たぶもアザラシの仲間にはなく、これも、より水中での生活に適応している結果と言える。潜水深度、潜水時間なども、アシカの仲間よりも優れている。

また、アザラシの仲間は、アシカの仲間よりも比較的極地に近い場所に生息する種類が多く、寒い地域での暮らしに適応した動物であるとも言える。寒さから身を守るのは、短いながらも質のいい毛皮と、体を包む大量の皮下脂肪による。さらに、ゾウアザラシやセイウチなどは巨体化することで、熱の放散を避けている。
しかしながら、これら天賦のアザラシたちの能力は、毛皮や油脂を欲していた人間社会には宝の山のように見えたのだろう。信じられないほどの数のアザラシたちが狩猟された歴史がある。

アザラシの仲間は、10属19種で構成されていて、淡水湖に住み体重50kg程度のバイカルアザラシから、4トンにまで成長するゾウアザラシ、北極や南極の氷上に住むアザラシに、ハワイやカリブ海に住むモンクアザラシなどバリエーションが豊かだ。
南氷洋に生息するヒョウアザラシは、細長くイルカのような姿をし、もっぱらペンギンや小型のアザラシなどを捕食する、鰭脚類の中では非常に珍しいアザラシである。
日本の水族館では、11種のアザラシと会うことができる。
科名、種名(写真)をクリックで、それぞれの解説と、飼育する水族館を紹介するページへ
大型のアザラシ
ミナミゾウアザラシ
ミナミゾウアザラシの写真
アゴヒゲアザラシ
アゴヒゲアザラシの写真
ハイイロアザラシ
ハイイロアザラシの写真

中型のアザラシ
ゴマフアザラシ
ゴマフアザラシの写真
ゼニガタアザラシ
ゼニガタアザラシの写真
クラカケアザラシ
クラカケアザラシの写真
タテゴトアザラシ
タテゴトアザラシの写真

小型のアザラシ
ワモンアザラシ
ワモンアザラシの写真

湖のアザラシ(小型のアザラシ)
バイカルアザラシ
バイカルアザラシの写真
カスピカイアザラシ
カスピカイアザラシの写真
タマちゃん、カモちゃん。
日本各地で、アザラシが漂着するたびに大騒ぎになる。タマちゃん、ナカちゃん、カモちゃんと名前まで付けられ、すわ温暖化の影響か?などと取りざたされる。(温暖化だったら逆に北上すると思うのだけど…)
本州では大騒ぎになるが、北海道では当たり前すぎて、大きな話題にはならないほどありふれた光景だ。

日本近海にやってくるアザラシは海氷の上で繁殖する種類が多く、流氷に乗って北海道のあたりまで回遊してくる。そうやって生まれた子どもが帰るべき北への進路を誤って、時おり南下してしまうのである。
このようなことは、最近になって増えたのではなく、以前からよくあった現象だ。30年ほど前には、なんとセイウチが三重県の熊野灘沖にやってきたこともある。

かわいそうだから、生まれ故郷に帰してやろうと言う人たちがいるが、そのような方向音痴あるいは気まぐれなアザラシを、正常な仲間のところに戻して繁殖させるのは、アザラシ全体の将来にとっては迷惑な話だろう。さらに、自然界で死ぬ動物たちは、他の生き物の餌になるなど地球の一員としての大切な役目も背負っている。
そしてなによりも、動物たちは自分の行動には自分で責任を取るものだ。人間たちの感傷的な考え方など、迷惑あって一理なしなのである。
中村 元