イルカの仲間やアシカなどヒレアシ類の仲間のショーは、古くから水族館の目玉イベントだった。
とりわけイルカショーは、その知性の高さとともに華やかなジャンプが人々の目を奪ってきた。そのためジャンプの高さや難易度を競う傾向があった。古くはイルカの火の輪くぐり芸などが行われていたことさえある。
近年は「イルカの芸」というような見られ方を嫌い、その身体能力を展示するという名目とし、ショーをパフォーマンスと言い換える水族館も多い。本誌では水族館の主張や文脈に合わせて、ショーとパフォーマンスを使い分けているが、パフォーマンスを見せるショーなのだから、言葉を換えることにはあまり意味はない。
それよりも注目すべきは、観覧者がイルカの何に最も心を動かされるか?というポイントだ。それは何かを伝えるという展示において最も重要なことだろう。
近頃、観覧者に感動を与えるイルカのパフォーマンスは、トレーナーやイルカ同士のコミュニケーション能力であり、それによって実現する息の合った行動だ。観覧者は、力強く華やかなジャンプ以上に、自分たちと同じあるいはそれ以上に思えるイルカのコミュニケーション力、しかも人とイルカという異種間でのコミュニケーションに強く感動する。
アドベンチャーワールドで演じられる息の合ったストーリーには、思わず目頭が熱くなった。また、鴨川シーワールドの巨大なシャチとトレーナーのショーは多くの人の心を動かす。
一方、別のアプローチから感動を起こしたショーが生まれた。伊勢シーパラダイスが発明した、柵無しふれあいショーだ。観覧者のいるギャラリーに、セイウチがトドがアザラシが出てきて吠える!触れられる!挙げ句にはセイウチにお尻をバンッと叩かれる!毎回何人かのチビッコが泣き出すほどの迫力だ。
実はヒレアシの仲間たちは、他種の生物と争うことがなく、野生の群れに人が訪れても逃げもせず襲ってもこない。そのヒレアシ類の性格とフィールドでの感動を展示したのがこの柵無しショーだ。観覧者の評判は高く、今では各地の水族館で模倣されている。
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