以上に述べた、集客の核心だけを取り上げた水族館のプロデュースおよびプロモーション理論は、多くの水族館および学芸員、とりわけ公立の施設には受け入れがたい内容であるかもしれない。さらに、筆者は動物園や博物館にもこの考え方を導入すれば、集客を増やすことができると考えているが、これもまた受け入れがたいと考える運営者は多いはずだ。
しかし、最初に述べたように、博物館系施設が国民への教育施設と考えられていた時代はもうはるかに過去のものだ。日本の博物館も欧米のそれと同じレベルになるためには、まず欧米のようにマスカルチャー(大衆)化が必要なのだ。大衆文化となることから逃げていては、いつまで経っても、子どもの施設(動物園)や、ハイカルチャーな施設(博物館・美術館)のカテゴリーから抜けられず文化のガラパゴス化へと陥ってしまう。
また、今後水族館はますます増え、さらに多様なスタイルへと広がるであろう。動物園の一部の水族館化は旭山動物園の成功を真似てすでに増えているし、館内に水族館を備える博物館も少なくはない。さらに筆者は現在、サンシャイン水族館がサンシャインシティ全体の売り上げ増に大きく貢献したことから、大規模ショッピングモールなどに集客の核となる小型の水族館を設置する企画を温めている。
これらを実行する場合に必要なのが、集客のための『水塊』のキーワードと、プロモーションを核とした水族館づくりである。周辺人口のあるところに水族館施設さえつくれば人が集まるという考えでは事業は長期的に成功しない。投資金額によって集客数が変わるというものでもない。マスカルチャー(大衆文化)としての水族館を、利用者の潜在的な期待に応えてつくりあげ運営することこそが事業の成否を左右するのである。
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