人なつこいセイウチ
セイウチは、その巨体と長い牙、さらに分厚いヒフで盛り上がった鬼づらなど、迫力あることこの上ないが、その風貌からは想像できないほどにヒトに慣れ、非常に高い理解力も持っている。そのため、セイウチを飼育しているほとんどの水族館では、さまざまなパフォーマンスを演じさせている。
パフォーマンスをしていないセイウチもヒトと遊ぶのが好きで、水槽の窓越しにヒトとにらめっこをしたりして、退屈をまぎらわせていることが多い。
とりわけ、セイウチの子どもはヒトが大好きだ。生後2年間は母親にぴったり寄り添って暮らす生態や、大人になっても狭い陸上で折り重なるように眠る習性があるせいだろう、飼育係に寄り添って離れなくなる。
驚いたことに、セイウチの子は見知らぬヒトに対しても同じ行動を示す。二見シーパラダイスで、子どものセイウチの部屋に入れてもらったところ、ボクを見て突進してくるやいなや子犬のように体をすりつけてきた。どうやら相手がだれであれ、体の接触をしているのが最も落ち着くらしい。
セイウチのこの習性を利用して、観客との間に柵のないふれあいプログラムを開発した水族館が、
二見シーパラダイスだ。巨大な大人のセイウチも、見知らぬ観客に触られたり、背中に乗せたりしても平気だ。このパフォーマンスは、
大分うみたまごや、
八景島ふれあいラグーンなどの新しい水族館の開発モデルとなった。