ペンギンパレード
オーストラリア観光で有名なフィリップ島のペンギンパレードは、コガタペンギンの観察ツアーのことだ。メルボルンから車で2時間ほどのフィリップ島に、オーストラリア大陸で最大のコガタペンギンのコロニーがある。
コガタペンギンは、早朝に海に出てエサを獲り、日暮れとともに巣のあるコロニーにいっせいに帰ってくる習性があり、その集団帰宅を見学するのだ。
コガタペンギンたちは、10~30羽ほどのいくつものグループに分かれて海から上陸してくる。波打ち際から陸上に向かうときに、誰が先頭になるかが、どうやら彼らうちでの駆け引きのようで、ピーピーと騒ぎながら押し合い転げ合って協議を続ける。そのうち誰かが決心したのか、それとも押されて勢い余ったのか、1羽のコガタペンギンが海岸の先のブッシュをめがけて走り始める。すると今度はグループの誰もが、遅れてなるものかとばかりにあわてて追いかける。かくして、ピョコピョコとこけつまろびつ進むペンギンパレードとなるのである。
不思議なことに、この波打ち際での駆け引きと海岸の速走りが終わると、その後ブッシュまでの100mほどの道のりは、いたって緊張感のない歩き方だ。すぐ近くにヒトがいるのもおかまいなしに、もくもくと巣の方向とおぼしき方向に向かって歩くのである。
こういった光景は、フィリップ島だけでなく、オーストラリア各地で小規模なものを見ることができる。フィリップ島、カンガルー島、タスマニア、ニュージーランドのオタゴの各地で、寒さに震えながら観察したが、コロニーのあるブッシュからは親を待つヒナのピーピーと鳴く声が聞こえ、それが聞こえると親鳥たちは突然足を速める。中には親の帰りを待てずにブッシュから飛び出してくるヒナもいて、実にほほえましい光景だ。
ところで、コガタペンギンはペンギンとしては珍しく、1年を通じてコロニーで暮らし、繁殖期以外も巣の近くに定住する。おかげでフィリップ島のペンギンパレードは年中稼げる観光資源となっているというワケだ。